Q2.財産の所在確認

Q2.残(遺)された財産、どれくらいあるの?

A2.財産の所在確認は以下の方法を参考にして下さい。

(1)財産総額の所在確認方法

①被相続人の過去1~2年分の所得税確定申告書

申告書で次のような確認をします。

  • 年金受給:年金種類
  • 不動産収入などの収入:収入の内訳
  • 保険料控除:生命・損害保険の存在、etc

なお、被相続人が生前に受けていた年金で、相続開始後に受け取る未支給年金は相続財産とはならず、受け取る遺族の一時所得となります。

②被相続人の過去3年分の贈与税申告書

相続財産に加算すべき相続開始前3年以内の贈与資産の確認

(相続時精算課税制度を適用した贈与財産はすべて相続財産に加算)

③過去5年分の預貯金の通帳

通帳で次のような確認をします。

  • 受取配当金:株式
  • 生命保険掛金:保険
  • 商品取引:証拠金・未決済額
  • 固定資産税の支払:不動産
  • 口座間振替:他の口座の存在
  • 貸金庫利用料:貸金庫
  • 定期的な入出金:不動産・貸金・借入金
  • 大きな金額の入出金:不動産の売買・骨董品などの資産売買、公共料金の引落口座の存在 etc

家族名義の預貯金で実質的に被相続人の所有であるものは相続財産としての計上を忘れがちなので要注意です。

④証券取引書・有価証券残高明細書

株式・投資信託などの確認

⑤保険証書

生命保険・損害保険の請求漏れチェック、保険料の支払者・受取人確認、満期返戻タイプ(建物更正共済=建更など)の確認

⑥死亡保険金の支払明細書

保険金額・受取人の確認

⑦死亡退職金支払明細書・退職金支払会社の退職金規程

退職金額・受取人の確認

⑧車検証

自動車も相続財産です。

⑨固定資産税、住民税、事業税の納付書

不動産の所在と未納税額(債務)の確認

⑩借入金の返済予定表

借入金は債務控除となります。

債務が多額の場合には相続放棄などの手続きが必要になりますので、債務の存在には注意が必要です。

⑪医療費の領収書

被相続人が病院にかかっていた時の医療費の未払は債務となります。

被相続人と生計を共にする親族がこの未払医療費を支払った場合は、医療費控除の対象になります。

また亡くなる前に本人が支払った医療費は被相続人の準確定申告で控除します。

⑫葬儀費用の領収書・支払明細

初七日の法要を葬儀と一緒に執り行う場合は、この初七日の法要費用までが葬儀費用となります。戒名料についても領収書をもらいましょう。

⑬土地建物賃貸借契約書その他契約書

契約書にて賃貸借期限や保証金などを確認

⑭土地実測図・公図、建物建築確認申請書、固定資産税課税評価証明書

土地は実測面積により評価します。

建築確認申請書にも測量図が含まれていますので参考にします。


(2)各相続人への財産分配

各相続人への財産の分配は遺言書のある、なしによって分かれます。

遺言書の存在は遺産分割上、大きいですね。

①遺言書がない、あるいは遺言書があるが法的に有効でない場合

遺言書のない場合等は、法律の定める相続人(法定相続人)が財産を引き継ぐことになります。これを法定相続といい、財産の取り分が決められています。例えば夫婦と子供2人の世帯で夫が亡くなった場合、妻は1/2、子供はそれぞれ1/4ずつとなります。しかし、相続人全員の協議により財産を自由に分配することができます。

(参考)法定相続人

民法の規定により相続人になる人の範囲と順位が決まりますが、その規定により決定された相続人のことを法律の定める相続人(法定相続人)といいます。具体的には被相続人(亡くなった人)の子や孫等の直系卑属(養子を含む)、父母・祖父母等の直系尊属、兄弟姉妹で、配偶者は常に相続人とされます。

②遺言書がある場合

遺言書のある場合は、原則としてその内容にしたがって財産の分配がおこなわれます。ただし、財産の一定部分を一定範囲の相続人が取得できる遺留分制度(下記参考参照)というのがありますので注意が必要です。この制度は、遺言により遺留分を侵害された相続人は、相続開始等から一年以内に遺留分減殺請求権を行使することによって財産の侵害部分を取り戻すことができるというものです。上記①のケースでは遺留分は妻1/4、子供は1/8ずつとなります。

(参考)遺留分権利者と遺留分の割合

胎児・代襲相続人にも遺留分があります。

なお、ケースとしては少ないですが、受遺者(遺言によって財産の贈与をうける者)は遺贈財産(遺言によって贈与された財産)を放棄し、改めて相続人全員の協議によって財産の分配ができることを付け加えておきます。

ただし、遺言執行者が決められている場合は、遺言執行者を交えて協議成立されることをお奨めします。